大切便りとは

「大切便り」は、シニア世代とその家族に向けて、思い出や日々の暮らしを“手紙”のように届けるコラムです。
みなさんの心に寄り添い、「自分の大切」を思い出すきっかけになることを願っています。

山本 隆さん(58歳)
子供の頃の遊び道具を今も大切にしている。
趣味は木工と読書。小さな成功を積み重ねることを信条に、日々を過ごしている。
けん玉と独楽の音
子供の頃、家にあったのは派手なおもちゃではなかった。
祖父が買ってくれたけん玉、年の瀬に近所のおじさんからもらった独楽。
畳の上でひとり何度もけん玉を挑戦し、失敗してはため息をついた。
けれど、玉がすっと皿にのった瞬間、声を上げて飛び跳ねた。あの達成感は、子供心にとって何よりの誇りだった。
独楽を回すと「ウーン」と低い音を立てて回り続ける。
その様子をじっと見つめるだけで、時間がゆっくりと流れるようで不思議と落ち着いた。
家族と過ごす遊びの時間
時々、母が一緒にけん玉で遊んでくれた。思った以上に上手にできる姿に驚き、子供ながらに「かなわないな」と悔しく思ったことを覚えている。父は独楽を力いっぱい回し、その音が部屋いっぱいに響いた。
そんな家族の姿を見ているだけで、遊びはひとりのものではなく、心をつなぐ時間だったのだと今ならわかる。
祖母が縁側から「がんばれ」と笑って声をかけてくれる。
できてもできなくても、その言葉がうれしくて、また挑戦しようと思えた。
おもちゃは小さな木や糸でできているのに、その背後には家族みんなの笑顔があった。
思い出がくれる力
大人になり、けん玉や独楽で遊ぶことはなくなった。
けれど、部屋の片隅に残っていたそれらを手にすると、不思議と心が落ち着く。
あの頃の自分の頑張り、家族の笑顔、達成感の喜びがよみがえってくるからだ。
今思えば、けん玉や独楽を通して学んだのは「失敗しても繰り返すこと」「小さな成功を大切にすること」だったのかもしれない。子供の頃のおもちゃは、ただ遊んだ記憶にとどまらず、今の自分を支える原点になっている。
読者のみなさんへ
子供の頃のおもちゃは、ただの道具ではなく、家族や思い出と一緒に心に残っています。
どうか皆さんも、昔遊んだものを思い出してみてください。
きっと、あの日の笑顔や声がよみがえるはずです。
小さなおもちゃが呼び起こす記憶は、大人になった今こそ心を豊かにしてくれます。
あなたにとっての「思い出のおもちゃ」は何ですか?ぜひ振り返ってみてください。
素敵な想い出をありがとうございました。
※本記事はプライバシー保護の観点から、登場する名前や人物設定はすべて架空のものです。ただし、綴られた想いの核心は実際の体験や声に基づいています。